能面打ちは楽しい

2年前に飲食店を辞めた際、嫁さんが
「しばらくは好きなことしたらええで」
と言ってくれたので図書館へ出向いた。

ずっと以前から(時間がつくれたら)やりたいと思っていた木彫のコーナーへ直行。
仏像入門から能面打ちのハウツー本まで一通り目を通す。
何かを「彫る」ことは決めていたので、では「何を」彫ろうか?
意思決定のプロセスでは、難易度は最後に検討することとし、以下の3つの要素を基準に絞り込んでいった。
1.出来上がった時に部屋に飾りたいか?
2.彫り進めている自分をイメージできるか?
3.ワクワクするか?
以上の要素から能面を彫ってみることにした。

能面に惹かれたのはもう一つの理由がある。それは、役柄の面ごとに寸法や形は昔から決まっていて能面師は型紙を使って彫り進めるのだ。
要するに人間国宝とまったく同じ手法で同じ面を彫ることが可能だということだ。ワクワクしかしない。

学生のころから、自分と相性の良い参考書探しが好きだった。
他人から勧められても自分がしっくり行くと感じなければ絶対に購入しなかった。
今回は長澤氏春氏に師事した能面師長澤朗氏による「小面(こおもて)を打つ」に決めた。
柔らかく品があり美しい面を彫っておられ、指導の言葉遣いや視点にも魅かれたためだ。
図書館で借りたものは返さねばならないので、ヤフオクで中古を探し早速購入した。
さあ、それでは始めよう


小面を打つ―原寸型紙による能面入門
木曽ヒノキ

実は今回はふたつ目の小面(こおもて)制作だ。
初回はホームセンターの格安なファルカタ材を積層にして接着して彫り上げたが、細かい部分の彫りで彫刻刀が繊維に負けたので、今回は正統派の木曽檜をネットで入手した。
とは言っても、小面を彫れるだけの75㎜厚ブロックは高額なので、約40㎜の乾燥材を購入。
これを2枚貼り合わせれば100%木曽檜で完璧なところだが、まだ練習の域であるし、そもそもせこいので正面半分を木曽檜、裏半分を前回の残りのファルカタ材で賄うことに。

木曽ヒノキ4コマ

皮に近い部分は繊維が集中しているので丸のこで除去。
寸法通りに木曽檜をカットしていく。スゴク香りが良い。


SK11(エスケー11) L型クランプ LS-250 最大口開き250mm

SHINKO(新興製作所) 電気丸ノコ SCS-147A
ファルカタ積層

これは前回作ったファルカタ材のブロック。12㎜の板を3枚積層してある。表面にタイトボンドを刷毛で塗布する。


フランクリン タイトボンド3 450mL
クランプワーク

先ほど切り出した木曽檜の無垢材を乗せてクランプで圧力を掛けながら固定する。
24時間で硬化するが、念のため48時間放置する。
SK11(エスケー11) L型クランプ LS-250 最大口開き250mm

型紙とケガキ

教科書通りにボール紙で作った小面(こおもて)の型紙。

四方もトレース

正面に続いて側面の四方にも型紙を使って鉛筆でトレースする。

余分カット4コマ

立体をイメージしながら、ブロックから不要な部分をのこぎりでカットしていく。
余分を残し過ぎると彫刻刀で取るボリュームが多いからだ。
しかし削り過ぎないように注意して。

彫り始め4コマ

のこぎりで大雑把に型取りが出来たらノミや小刀、彫刻刀を使ってガンガン彫っていく。
ここでは型紙を合わせながら、型紙の寸法に近づくまでは結構乱暴で大丈夫。
表に神経を使うので、集中力が途切れそうになったら気分転換もかねて裏側も彫っていく。

型紙当て

プロフィールに型紙を当てながら、ぴったりになるまで彫り進める。

徐々に顔になる

型紙に忠実に、教科書の写真を見ながら少しずつ凹凸を彫り出していく。
個人的には目の周りと鼻が難しく、失敗を恐れてチビチビ彫っていた。
彫刻刀の跡が残らない様に薄く薄く、少しずつ少しずつ形を整えていく。

裏も彫り始める

だいぶディティールも進んできた。同時に裏側も彫って薄く仕上げていく。裏の深いところは特殊な刀を使う。目と鼻に穴を開け、口にも切り込みを入れた。

彫りあがり

毎日真剣に集中していたら、なんだか優しそうなお顔に彫りあがった。
本当の能面師の方たちは決してやすりを使わず、刀跡を残さないように彫刻刀だけで滑らかな表面を仕上げるのだが、私にはまだ到底無理なので、邪道ではあるがサンドペーパーも併用して滑らかに仕上げていく。

焼き印

裏面に焼印を施す。気持ちはプロ。

焼き印4コマ

面の裏は本来は本漆で仕上げるが、それっぽく見える漆塗料カシュー艶消し黒で塗装。
表は色を付けていない胡粉(ごふん)を膠液(にかわえき)に溶いて塗っていく。
塗っては乾かし、サンドペーパーで整え、また胡粉を塗るを繰り返して3~4回塗り重ねる。


カシュー No92 艶消黒 1/12L
着色4コマ

次は着色を施すために、胡粉と膠液に微量の岩絵の具を混ぜて調色し刷毛で塗っていく。
髪の毛の部分はあとでエージング的な傷をつけた時に下から出てくる色を先に塗っておく。
この頃は結構タバコ吸っていたんだなぁ。

眉

色付けで個人的に一番難しかったのが眉。硝煙という真っ黒い煤(すす)を綿をくるんだ柔らかい布で乗せていく感じ。これ、本当に難しい。

砥の粉4コマ

汚しといわれるわざと経年劣化した感じも含めて着色が一旦落ち着いたら、との粉で全体を磨く。イメージは細かい磨き粉を見えない凹凸に擦り込んで表面を平らにするような感じです。
最後に、何も持たずに手のひらでゴシゴシ擦っていると、なぜか気持ち良いテカリが出てきます。

完成

左がはじめてつくった小面、右が今回のふたつ目です。
型紙はあっても同じにはならないですね。
手を動かしている時って本当に夢中になれて気持ちが良いですよね。

能面打ちは楽しい

2年前に飲食店を辞めた際、嫁さんが
「しばらくは好きなことしたらええで」
と言ってくれたので図書館へ出向いた。

ずっと以前から(時間がつくれたら)やりたいと思っていた木彫のコーナーへ直行。
仏像入門から能面打ちのハウツー本まで一通り目を通す。
何かを「彫る」ことは決めていたので、では「何を」彫ろうか?
意思決定のプロセスでは、難易度は最後に検討することとし、以下の3つの要素を基準に絞り込んでいった。
1.出来上がった時に部屋に飾りたいか?
2.彫り進めている自分をイメージできるか?
3.ワクワクするか?
以上の要素から能面を彫ってみることにした。

能面に惹かれたのはもう一つの理由がある。それは、役柄の面ごとに寸法や形は昔から決まっていて能面師は型紙を使って彫り進めるのだ。
要するに人間国宝とまったく同じ手法で同じ面を彫ることが可能だということだ。ワクワクしかしない。

学生のころから、自分と相性の良い参考書探しが好きだった。
他人から勧められても自分がしっくり行くと感じなければ絶対に購入しなかった。
今回は長澤氏春氏に師事した能面師長澤朗氏による「小面(こおもて)を打つ」に決めた。
柔らかく品があり美しい面を彫っておられ、指導の言葉遣いや視点にも魅かれたためだ。
図書館で借りたものは返さねばならないので、ヤフオクで中古を探し早速購入した。
さあ、それでは始めよう


小面を打つ―原寸型紙による能面入門
木曽ヒノキ

実は今回はふたつ目の小面(こおもて)制作だ。
初回はホームセンターの格安なファルカタ材を積層にして接着して彫り上げたが、細かい部分の彫りで彫刻刀が繊維に負けたので、今回は正統派の木曽檜をネットで入手した。
とは言っても、小面を彫れるだけの75㎜厚ブロックは高額なので、約40㎜の乾燥材を購入。
これを2枚貼り合わせれば100%木曽檜で完璧なところだが、まだ練習の域であるし、そもそもせこいので正面半分を木曽檜、裏半分を前回の残りのファルカタ材で賄うことに。

木曽ヒノキ4コマ

皮に近い部分は繊維が集中しているので丸のこで除去。
寸法通りに木曽檜をカットしていく。スゴク香りが良い。


SK11(エスケー11) L型クランプ LS-250 最大口開き250mm

SHINKO(新興製作所) 電気丸ノコ SCS-147A
ファルカタ積層

これは前回作ったファルカタ材のブロック。12㎜の板を3枚積層してある。表面にタイトボンドを刷毛で塗布する。


フランクリン タイトボンド3 450mL
クランプワーク

先ほど切り出した木曽檜の無垢材を乗せてクランプで圧力を掛けながら固定する。
24時間で硬化するが、念のため48時間放置する。
SK11(エスケー11) L型クランプ LS-250 最大口開き250mm

型紙とケガキ

教科書通りにボール紙で作った小面(こおもて)の型紙。

四方もトレース

正面に続いて側面の四方にも型紙を使って鉛筆でトレースする。

余分カット4コマ

立体をイメージしながら、ブロックから不要な部分をのこぎりでカットしていく。
余分を残し過ぎると彫刻刀で取るボリュームが多いからだ。
しかし削り過ぎないように注意して。

彫り始め4コマ

のこぎりで大雑把に型取りが出来たらノミや小刀、彫刻刀を使ってガンガン彫っていく。
ここでは型紙を合わせながら、型紙の寸法に近づくまでは結構乱暴で大丈夫。
表に神経を使うので、集中力が途切れそうになったら気分転換もかねて裏側も彫っていく。

型紙当て

プロフィールに型紙を当てながら、ぴったりになるまで彫り進める。

徐々に顔になる

型紙に忠実に、教科書の写真を見ながら少しずつ凹凸を彫り出していく。
個人的には目の周りと鼻が難しく、失敗を恐れてチビチビ彫っていた。
彫刻刀の跡が残らない様に薄く薄く、少しずつ少しずつ形を整えていく。

裏も彫り始める

だいぶディティールも進んできた。同時に裏側も彫って薄く仕上げていく。裏の深いところは特殊な刀を使う。目と鼻に穴を開け、口にも切り込みを入れた。

彫りあがり

毎日真剣に集中していたら、なんだか優しそうなお顔に彫りあがった。
本当の能面師の方たちは決してやすりを使わず、刀跡を残さないように彫刻刀だけで滑らかな表面を仕上げるのだが、私にはまだ到底無理なので、邪道ではあるがサンドペーパーも併用して滑らかに仕上げていく。

焼き印

裏面に焼印を施す。気持ちはプロ。

焼き印4コマ

面の裏は本来は本漆で仕上げるが、それっぽく見える漆塗料カシュー艶消し黒で塗装。
表は色を付けていない胡粉(ごふん)を膠液(にかわえき)に溶いて塗っていく。
塗っては乾かし、サンドペーパーで整え、また胡粉を塗るを繰り返して3~4回塗り重ねる。


カシュー No92 艶消黒 1/12L
着色4コマ

次は着色を施すために、胡粉と膠液に微量の岩絵の具を混ぜて調色し刷毛で塗っていく。
髪の毛の部分はあとでエージング的な傷をつけた時に下から出てくる色を先に塗っておく。
この頃は結構タバコ吸っていたんだなぁ。

眉

色付けで個人的に一番難しかったのが眉。硝煙という真っ黒い煤(すす)を綿をくるんだ柔らかい布で乗せていく感じ。これ、本当に難しい。

砥の粉4コマ

汚しといわれるわざと経年劣化した感じも含めて着色が一旦落ち着いたら、との粉で全体を磨く。イメージは細かい磨き粉を見えない凹凸に擦り込んで表面を平らにするような感じです。
最後に、何も持たずに手のひらでゴシゴシ擦っていると、なぜか気持ち良いテカリが出てきます。

完成

左がはじめてつくった小面、右が今回のふたつ目です。
型紙はあっても同じにはならないですね。
手を動かしている時って本当に夢中になれて気持ちが良いですよね。

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